釣り日和 釣り師はタイヤを履き替える
大方の河川が解禁を済ませ、桜の開花を心待ちにする頃合いではあるが、北信濃ではタイヤ交換の季節である。
この日は実家に赴き、老母、姪、娘、それぞれの軽自動車のタイヤをまとめて3台分、履き替えなければならない。
手近なところ、僕以外には男手がないわけで、まあ致し方無いところなのである。
我が家に限ったことではないけれど、総じて女手というものは口数と手数が反比例するように思えるのは僕の気のせいだろうか。
いやいや、そんなときこそ寡黙、かつ穏便にやり過ごした方が得策であると僕は思う。
さて。
老母は別として。
問題は姪と娘である。
それなりの年頃のようではあるが。
ちょいと顎をしゃくるだけで、力仕事に黙々と取り掛かってくれるような、若くてイキが良い、ついでに都合もいい、そんな男友達の一人や二人、速やかに用意できないものだろうか。
ふと、そんな思いがよぎるのだけれど、ここでも沈黙は金である。
まあいい。
僕は長年、世間から都合よく顎で使われてきた側である。
今更、とやかく言えた筋合いでもない。
土手下では、ちらほらと菜花が咲き始めた穏やかな春の一日。
やわらかい陽がきらめく溪の流れに思いを馳せつつ。
僕にとって分不相応な第一のビールは老母の心尽くし。
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