滅茶苦茶な釣り師たちの冬支度
師走であるが、師が走り回るわけではない。
この日は師の営む旅館の植栽の冬支度の手伝いである。
日頃から享受している恩恵に報いなければならない。
面子はKONちゃんとB場ちゃんと僕である。
雪囲いという程でもないけれど、これからの降雪に備えて枝を束ねたり、竹竿で補強する作業であるが、肝心の仕事の手際はどうであるか。
そもそも釣り師の所業である。
縄をとぐろにしたり、口々に喚いたり、いい年をした男が雁首を揃えて右往左往いたすのである。
要するに大騒ぎである。
造園稼業の本職が見たら匙を投げるに違いない。
三人寄れば文殊の知恵と言うけれど、何人寄ろうが駄目なものは駄目である。
そうは言っても、稚拙な仕事振りながら通じる気心。
釣り師の機微としか言いようがないのはお互い様。
職場での仕事じゃこうはいかない。
とりわけ寒い日にも拘わらず、つい、寒さを忘れちゃう。
さて。
お昼ごはんは件の中華そばである。
またスープを全部飲んじまった。
作業を終えてキャスティングの指導を受けるB場ちゃんである。
来年の釣果を楽しみにしているのは当人よりむしろ僕の方ではないだろうか。
大いにプレッシャーを感じてほしいところである。
さて。
毛鉤釣り師は釣技で語れと言いたいところであるが、年甲斐もなく射的を始めるB場ちゃんである。
遠くに並べた空き缶を狙い撃つ。
ほぼ、的を外すことはない。
狙撃の王にでもなるつもりだろうか。
まあいい。
現役の源流王である僕と釣りに行くのである。
それぐらいなってもらわないと僕が困る。
一方、屈託のない笑顔でBB弾を撃ちまくるKONちゃんである。
実を言うと、こう見えてもおじいちゃんである。
一応、戸籍の上では祖父である。
敢えて多くは語るまい。
さて。
このような底知れぬ面子と釣りに行かなければならない源流王の気苦労。
少しばかりお察し頂くわけにはいきませんかね。
釣り師たちの休日は他愛なく暮れる。
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