夏岩魚 源流の釣り旅

SFM

2018年08月06日 18:00

この釣り旅はテン場を設えるまでが長くて辛い。

岩魚は足で釣れ。
それぐらいしか僕には能が無い。

やっていることはほとんど沢屋と同じである。

交通手段は無い。
通信手段も無い。
カネで買えるものは一切無い。

何か一つ手違いがあれば遭難に直結することが唯一の懸念である。

僕はここで三日間、誰にも会わずに岩魚釣りだけをして過ごすことになる。
何よりも、下界の猛暑から抜け出して溪の木陰を軽快に歩きたい。


予想してはいたけれど、やっぱり型は今一つ。
ここでも暑さの影響である。





まあいい。
着実に世代交代がされている証と思わなくてはならない。
型に拘らず、淡々とゲームをこなせばよろしい。






岩魚は距離を釣れ。
そのあたりがこの溪でのゲームの核心ではないだろうか。

凡そ、一本の毛鉤で10匹ぐらい掛けるのが目安。

時折、ただ機械的に岩魚を釣っているだけのようにも思えてくる。


そんな時。
ついつい釣れてしまったのがこれである。
尺二寸を超える大岩魚。





そんな心算はさらさら無かったのだけれど、釣れてしまったものは今更ながら仕方が無い。
きっと何かの間違いに違いない。

もう店仕舞にしてもいいんじゃないかと思うところだけれど、この溪からはそう簡単に帰れないから、釣りを続けるより他に無い。


貴重な尺が混じる。












テン場に連れて行く酒類であるが、やはりここは25度以上の蒸留酒に限る。
ビールや缶酎ハイも捨てがたいけれど、肩への負担が僕には過ぎる。
質量対効果とでも言うのだろうか、そういうことなのである。

昼はそうめんで麦焼酎。




食後の一服を燻らして、昼寝をしたり。




夜はすき焼きで芋焼酎。




焚火はウィスキーのとてもいい肴になる。



テン場の夜というものは、下戸には辛い一夜に違いない。


最後の日、釣りながら帰りの道中。
これまでとは打って変わって型が揃う。

淡々としたゲームではあるけれど、どこか品の悪い笑みが浮かぶ自覚ぐらいは僕にもある。













ここで竿を納める。




このあとは源頭を詰めて、稜線越えの長くて辛い道のりをこなさなければならない。






溪を独り占めした後は露天風呂を独り占め。
溪泊まりは浮世の垢を落とせるけれど、物理的に体が垢まみれになる。



何も言えない。



三日振りの冷えたビール。



「・・・・・。」
日本語になっていないのが我ながら情け無い。
やれやれ。

関連記事