尺岩魚の季節
梅雨入りである。
この日。
吉と出るか凶と出るか。
午前中、僕の釣果はこれだけである。
B場ちゃんの釣果には及ばない。
この日の彼は半ドンである。
食後の一服を燻らせて引き揚げて行く後ろ姿に漂うのは大人の余裕である。
僕は一人で居残って残業をしなければならない。
そんな時、つい出ちゃったのがこの尺上岩魚である。
物事には心の準備というものが必要ではないだろうか。
けれど、釣れてしまったものは今更ながら仕方が無い。
ついつい漏れる下品な笑み。
ほんの一時だけ食いが立つ。
けれど水面から口元が出ない。
岩魚が上品過ぎると釣り師としてはやりにくい。
そこで、毛鉤を変えて流心に沈めて三つ数えてみると何故か岩魚が付いている。
にわか仕込みの付け焼刃である。
確信に欠けるけれど、まあいい。
ハルゼミが鳴き止む。
ここが引き際。
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