岩菅山の先には裏岩菅山

SFM

2017年09月25日 20:37

小さな沢を二つ渡って、取りついた尾根を登り切るとのっきりに出る。
少し歩くと視界が開ける。
きっとこのあたりが森林限界なのではないだろうか。


雲の上に鹿島槍と劔。
此奴ら流石。


ひんやりとした空気が僕にはとても気持ちがいい。
なんだか身体が軽くなる。
山頂まで少しピッチを上げてみたくなる。

岩菅山の山頂。



ここで快哉を叫びたいのは人情だけれど、僕にはまだ先がある。

裏岩菅山までの吊り尾根のような稜線を、思いを馳せつつ一人で歩かなければならない。
ここが僕にとって今回の核心である。

笹とハイマツと栂。
時々シャクナゲが顔を出す。


歩いて来た道を時折振り返ってみたくなる。
人生にもそんな時があるのではないだろうか。
笹がキラキラ光って見えたりする。


ここは凡そ海抜2300mの稜線。
思いがけずこんな出会いは嬉しい。

人にもよるだろうけれど僕は岩魚釣り師である。

さて、裏岩菅山の山頂。


僕に限ってはこの山に足を向けてはならない。
合掌。

鳥甲山。
此奴はけっこう手強い。


中岳から烏帽子岳。
その奥に苗場山の台状湿原。
きっと、大勢の登山客が歓声を上げているに違いない。


佐武流山から上信越国境の深い山群。


ここからの眺めで唯一痛々しく思えるのがこれである。
焼額山の南斜面。

なます斬りである。
こんな開発ができた業者は限られている。

加えて、当時はそこら中から、スキーに連れて行けなどとせがんだり、それを引き受けたりした男女の群れが大挙して押しかけ、この山にたかっていたのである。

山の蛆である。

この岩菅山も、一方的に俎板の上にのせられてしまったことがあったけれど、斬り刻まれる直前に命拾いをしたことになっている。
当時の見識を備えた諸氏の尽力によるところが大きかったそうである。

他人の笛に都合よく踊らされても後々ロクな事にならない。
泡銭が定着したかどうか、あるいは天罰が下ったかどうか、僕などの知るところではないけれど、畳の上で往生できたとすればマシな方じゃないだろうか。

さて、長居をしたいのは山々ではあるけれど、いつかは帰らなくてはならない。

心を残しながらも足取りは軽く。

温泉依存症につける薬は源泉掛け流し。



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