2021年03月22日
毛鉤釣り師がサシで飲る
某河川の解禁日。
乗り遅れた釣り師が二人、某所にて盃を傾ける。

相対するのはサオ狩りのH田サンである。
精力的に狩り集めた米国製の高性能ロッドは相当な本数になっているに違いない。
昨年秋の発言である。
「セージとG・ルーミス以外はサオじゃ無ぇ。」
本人は忘れているだろうけれど、聞いちゃったかと言われれば確かに聞いちゃったのである。
ほんの小声ではあったけれど、呟き一つでタジタジにさせられちゃう。
恐れ入り谷の鬼子母神。
いずれ、彼が現世から消滅する刹那。
枕元に遺された高価な釣り具の山は、一度たりとも活躍の場に恵まれず、新品同様のまま路頭に迷うに違いない。
そのあたり。
多少なりとも釣り具の行く末には心を砕くフシがあるらしい口振り。
まあ、畳の上で往生できればの話であるがね。
などと、そのようなことは敢えて口に出さず。
黙々と。

「セージに限って言えば、何本ぐらい持ってるの?」
両手の指をすべて折りつつ。
暫し沈黙。
十本指じゃ足りないのは間違い無いらしい。
はいはい、わかったわかった。
またまた小声で。
「サオなんて、いちいち数えるもんじゃ無ぇ。」
聞いちゃったヨ。
確かに。

ふと。
目が覚めた夜半。
氷が解けた水ほどおいしいものはない。

乗り遅れた釣り師が二人、某所にて盃を傾ける。
相対するのはサオ狩りのH田サンである。
精力的に狩り集めた米国製の高性能ロッドは相当な本数になっているに違いない。
昨年秋の発言である。
「セージとG・ルーミス以外はサオじゃ無ぇ。」
本人は忘れているだろうけれど、聞いちゃったかと言われれば確かに聞いちゃったのである。
ほんの小声ではあったけれど、呟き一つでタジタジにさせられちゃう。
恐れ入り谷の鬼子母神。
いずれ、彼が現世から消滅する刹那。
枕元に遺された高価な釣り具の山は、一度たりとも活躍の場に恵まれず、新品同様のまま路頭に迷うに違いない。
そのあたり。
多少なりとも釣り具の行く末には心を砕くフシがあるらしい口振り。
まあ、畳の上で往生できればの話であるがね。
などと、そのようなことは敢えて口に出さず。
黙々と。
「セージに限って言えば、何本ぐらい持ってるの?」
両手の指をすべて折りつつ。
暫し沈黙。
十本指じゃ足りないのは間違い無いらしい。
はいはい、わかったわかった。
またまた小声で。
「サオなんて、いちいち数えるもんじゃ無ぇ。」
聞いちゃったヨ。
確かに。
ふと。
目が覚めた夜半。
氷が解けた水ほどおいしいものはない。