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2022年06月26日

岩魚街道 ネマガリダケなんか食ってやった

時には藪漕ぎを避けて通ることができない釣り師の人生。

中でもネマガリダケの藪漕ぎは、こんな苦労をするぐらいなら死んだ方がマシだと思えるほど過酷な重労働であるが、藪を制圧した釣り師は渓の全てを手に入れることができる。

仮にであるが、山深いネマガリダケの藪の中に岩魚を釣るためだけの杣道が先人の手によって切られていたとして、今でも人知れず空白の歴史を紡ぐ男が生き残っていたとしたらどうであろうか。
はっきり言って、ただの釣りバカとしか言いようがない。
本人が言うのであるから間違いない。

岩魚街道 ネマガリダケなんか食ってやった

釣り師にとってネマガリダケは煮ても焼いても食えない抵抗勢力ながら、北信濃を代表する初夏の味覚として絶大な勢力を誇る人気者なのである。

皮を剥いて節を取り除いてしまうと、ほんの僅かしか食べるところが残らないという極めて歩留まりの悪い食材にも拘わらず、殊のほか愛好者が多いようで、この季節になると大勢のタケノコ採りが各地で大発生し、夜明けを待たずに一斉に薮に飛び込む様はどこか悲壮感を感じさせる。

さらに、タケノコを採っているうちに方向がわからなくなって、薮の中で力尽きて動けなくなっちゃうという遭難事故が多発するのもこの季節の風物詩である。

聞く所によると、ネマガリダケは食品市場ではとりわけ高値で取引されている高級食材らしいから、タケノコ採りの意識の中には、キロあたりの相場から一本あたりの単価を割り出して、これを何本採ればいくらになるというような計算が常にされているに違いない。
身も蓋も無いことを言うようだけれど、金銭に対するささやかな執着心が遭難の発生に多少なりとも影響しているのではないかと察せられちゃうあたり、微笑ましくもあり、人間的でもあると思いつつ、敢えて多くは語るまい。

まあ、そのあたりに関してはタケノコ採りが抱える永遠のテーマであるから、ネマガリダケが存在する限り、毎年のように同じことが繰り返されるに違いない。

けれど、笹薮の中で迷子になっちゃうのが釣り師であったとしたら話が変わってくる。
釣りの亡者と言わざるを得ない。

そのようなことが起きないように、岩魚の道には手入れが不可欠である。
藪は生き物であるから放っておくとすぐに道が塞がっちゃうのである。

岩魚街道 ネマガリダケなんか食ってやった


本来であれば、このような仕事は若い世代が率先してやるべきであるが、良くも悪くもこの時世。
今時の若い奴等は全く以って使い物になりゃしないと嘆いた年配者の心情がこの年になってよくわかる。

そんな長年にわたる僕の苦労を分かち合うべく、自ら手助けを申し出てくれたのがB場ちゃんである。
咥え煙草でポケットに手を突っ込んで歩く様は相変わらずではあったがね。

岩魚街道 ネマガリダケなんか食ってやった

しかも、充電式の電動工具まで持参してくれちゃうほどの至れり尽くせり。

岩魚街道 ネマガリダケなんか食ってやった

このような男を人財という。
ここで財の字を充てたのはお察しのとおりである。
釣り師というものは人間性が顕著に顕れる人種である。
人財、人材、人在がそれぞれあり、ごく稀に人罪というものが存在する。

などと思いながら、この上なく辛い仕事をこの上なく心穏やかにこなすことができたのは釣友によるところである。

釣友の有難さが身に沁みて、副流煙が目に沁みた。


散々薙ぎ払っておきながら、ネマガリダケは今が旬である。
採り頃ぐらいは僕にもわかる。

岩魚街道 ネマガリダケなんか食ってやった

岩魚街道 ネマガリダケなんか食ってやった

採っちゃったものは仕方がない。
仕方がないから食ってやる。

岩魚街道 ネマガリダケなんか食ってやった


僕の名はSFM。
わけあって、この渓谷の王になっちゃったと言えばなっちゃったのだろうけれど、年も年だし、近々引退したいと願いつつ、それもままならずに途方に暮れている男だ。
よろしく。

岩魚街道 ネマガリダケなんか食ってやった




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